第三回樂之会「弱法師」


【日時】2024年7月15日(祝・月)13:30開場/14時00分開演/16時10分終了予定
【場所】セルリアンタワー能楽堂
【チケット】全席指定 7,000円 チケット発売日4月30日(火)
お申し込み メール gakunokai0319@gmail.com 電話 03-3990-2048 お問い合わせフォーム

ご挨拶

 いつもご支援ありがとうございます。令和四年、自身の公演会として樂之会(がくのかい)を立ち上げました。名称の由来は『論語』の中の
 「これを知る者はこれを好む者に如かず。 
  これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。」
 楽しむ者が知る者よりも好む者よりも優れているという意味より名付けました。この言葉の通り、私のあこがれの方々は皆、人生の中で様々な障害があっても乗り越えていつまでも能に心を躍らせ続けておられることに気が付きました。私も役者として心躍る舞台をいつまでも目指し、その舞台によりお客様の心も躍るよう精進を重ねる所存です。

 第三回目は名曲にして難曲の「弱法師」に挑戦致します。今回の企画の始まりは十年以上前。私の大学の先輩で、間伐材から布地を織っておられる加藤貴章氏(縁樹の糸・代表)と出会い、私はその布地に感銘を受け、この生地で能装束が作れないものかと思いました。その時は話が流れてしまいましたが、私自身の環境も変わり機が熟したと思い、今回改めてご依頼し、結実致しました。その装束を生かす観点から「弱法師」を選曲致しました。
 世阿弥は能の魅力について一休宗純の歌を引き、「桜花砕きて見れば花も無し 花こそ春の空ゆもちくる」(『遊楽習道風見』)と表現しています。桜の木を砕いて中を見てみても、そこに花はないけれど、春の空がちゃんと花を運んできてくれる、という意味です。春が来て花が咲く、自然の摂理の背後にある不思議や、目に見える物質の世界のはかなさを彷彿させられます。世阿弥の文脈では、能の謡、舞をどんなに分析してもそこには何もなく、能の素晴らしさは様々な要素が複雑に絡んで不思議と出現することを意味しています。「弱法師」の魅力はまさにこの和歌そのもの、言語化出来ない、能らしい淡い魅力とでも言うより他ないのではないかと思います。

 間伐材から織り上げた布地はほんのり木の香りが致します。その香りは直接は客席に届かないかも知れませんが、気として舞台に宿って客席に届けばと思います。

仕舞

岩船 武田應秀
船弁慶 武田智継 武田崇史
地謡 林本 大 武田友志 武田尚浩 武田文志

狂言

居杭 シテ(算置)山本則重 アド(居杭)山本則光 アド(亭主)山本則秀

仕舞

蝉丸 山階彌右衛門
歌占キリ 坂井音雅
地謡 林本 大 清水義也 武田尚浩 武田文志

弱法師
シテ( 俊徳丸) 武田祥照
ワキ(高安通俊)大日方寛
アイ(通俊の下人)山本則秀
後見 山階彌右衛門 武田 宗和
地謡 武田崇史 武田文志 坂井音雅 清水義也 浅井文義 武田友志

大鼓 亀井洋佑
小鼓 曽和正博
笛 杉信太朗

あらすじ

狂言「居杭」(いぐい)

居杭という名の少年は、世話になっている亭主に戯れに頭を叩かれるのが嫌で、清水の観世音にこの事を祈願すると不思議な頭巾を授かります。この頭巾を持って亭主のもとを訪ね目の前で被ってみると、不思議なことに姿が消えます。驚いた亭主は、偶々通りかかった算置き(占い師)を呼んで居場所を占わせますが・・・。

居杭役はなかなかの大役で、山本則重氏のご長男・則光君(八歳)にお勤め願いました。

能「弱法師」(よろぼし)

高安通俊(ワキ)は讒言により息子を家から追い出してしまった事を後悔し、大阪・四天王寺で七日間の慈善活動を行うことにします。そこへ、盲目の乞食となり、弱法師とあだ名された少年が四天王寺を訪れ、通俊の施行を受けます。また、四天王寺が日本最初の寺だったことや本尊の慈悲の深さを謡います。その姿に通俊は自分の息子だと気づきますが、人目を憚り、日が暮れてから名乗ることにことにします。弱法師は四天王寺の西の鳥居から見える夕日を拝み、心眼を啓きます。やがて日も暮れ、通俊は父親と名乗り、弱法師を連れて帰宅します。

事前講座「弱法師」を見るために

当日13時〜13時30分/参加費1,000円
弱法師の見どころをご説明する他、当日使用予定の面や装束をご紹介し、今回の能装束の制作秘話などをお話し致します。 (お話し:武田崇史)