第五回記念公演 春燈会


【日時】2019年4月6日(土) 14:30開演/17:30終演予定
【場所】セルリアンタワー能楽堂
【チケット】全席指定・2019年1月6日(日)発売開始 一般7,000円 壇信徒6,000円 学生席 3,000円

第一部
法話
法要「仁王会」
東光寺住職・福傳寺副住職 原祥壽
他 真言宗智山派青年僧

(休憩20分)

第二部
解説 武田文志
能「葵上」
シテ 武田祥照
ツレ 武田崇史
ワキ 大日方寛
アイ 野村太一郎

笛 杉信太朗
小鼓 鵜澤洋太郎
大鼓 亀井洋佑
太鼓 林雄一郎

後見
山階彌右衛門
野村四郎

2015年より八王子福伝寺にて始めました春燈会も五回目になり、今回は記念公演として、セルリアンタワー能楽堂にて行います。

今回上演致します「葵上」は250ある現行曲の中でも屈指の名曲。多くの先輩方の素晴らしい「葵上」を拝見し、いつか勤めたいと思っておりましたが、今回初演させて頂きます。
「葵上」は「源氏物語」を題材にし、六条御息所の生霊が光源氏の正妻・葵上をとり殺そうとしますが、比叡山の山伏の力により調伏られるというストーリーです。

よく知られた題材で、舞台展開の明快さ、能面にも般若を使うこともあって、初めての方にも楽しんで頂ける作品で、上演回数の多い人気曲です。
ただ、若手の能楽師にとっては大曲です。シテの御息所とは皇太子妃を意味しますが、そのようなとても高貴な身分の女性が嫉妬に悶え、同時にそのプライドゆえにそのような自分をも許せないという複雑な女性の心理を表現する高い技術力が求められます。お歴々の先輩方はそれをごく自然にこなされますが、若手能楽師にとっては至難の業です。
「葵上」にはツレ役がおり、六条御息所の生霊を呼び出す巫女の役がおります。今回は弟、崇史が勤めてくれますが、私は今まで七回ほどこのお役をさせて頂いて、様々な方の「葵上」を間近に拝見させて頂いています。また春燈会前の1月には静岡グランシップにて、2月にはフランス公演でも、「葵上」の上演があり、巫女の役を頂き、素晴らしい先輩方のおシテにて勤めさせて頂きます。葵上づいた状態で春燈会を迎えさせて頂きます。
武田祥照の挑戦を、見守って頂けると嬉しいです。

第五回記念公演 春燈会 特別インタビュー

第五回記念春燈会の特別企画!!
めったにやられない法要だという法要・仁王会をテーマに福伝寺副住職の原祥寿さんに、祥照がインタビュー。
二人の春燈会にかける思いを、垣間見て頂ければと思います。

武田「今回の法要「仁王会」について教えて頂けますでしょうか。」
原「そもそも「仁王会」は仁王経(仁王護国般若波羅蜜多経)にも基づいた法要なんだけども、二パターンのお経があります。鳩摩羅什の旧訳のものと不空三蔵の新訳のものとがあります。」
武田「鳩摩羅什! 歴史の授業で聞いたことがあるぞ!」
原「そうそう。二パターンあることが少し混乱を招きやすいんだけども……。
不空三蔵は弘法大師の二つ前の師にあたる人です。今回、チラシを作るにあたって、その解説文で五大力菩薩と五大力明王と書いてあるのは、この二パターンの訳による違いからです。(チラシ参照ください!)
古い旧訳の仁王経はこのお経を読み称賛することで国が守られるんだけども、新訳の仁王経では各所で密教化されたり用語が改められたりしているよ。」
武田「それが、旧訳と新訳の違いですか?」
原「他にも仏の尊格の名前が変わったりもするだけ……」
武田「今回の法要ではどちらを読まれるんですか?」
原「新訳の仁王経を読むよ。お経の中には『敷百高座請百法師。一日二時。講説般若波羅蜜多八千億偈。』って記述があって、百座百講の仁王会の典拠になるんだけど、確か能の詞章にもあるよね?」
武田「能の雷電の中にもあります。」
原「そうだね。今回は仁王経の講讃を中心とした法要をするよ。
より大規模な法要では大壇や護摩壇などをいくつも設ける法要もあるんだけど、能楽堂でお護摩はできないからその法要はやめまたした(笑)」
武田「なるほど(笑)。仁王経は訳があるということはインド伝来なんですか?」
原「一応そう言われてる。ただ、中国思想の影響も大きいと言われているよ。」
武田「仁王会は本場の中国でもやられていたんですか?」
原「うん、553年に初めて中国の宮中で行われた最初の例らしい。
日本の場合には斉明天皇の660年に初めてやられたと記録が残っていて、そのあと、これが重要なんだけども、聖武天皇の729年から宮中で行われて以降、恒例行事になった。」
武田「毎年やられてたんですか?」
原「それがとても重要で、一大一講や一代一度の仁王会といって天皇ご即位の時に必ずやる仁王会と春秋の仁王会とあって。」
武田「大嘗祭と新嘗祭みたいな感じですか?」
原「そう。それと同じ。その他には天災や飢饉の時に行われた臨時仁王会と三種類がある。これらの仁王会は大法、秘法に定められていて、勅を受けて実施される法要だった。それが時代が下って律令制度が崩れていく中で、民間にも下りてくる。
それが鎌倉期になると、武家などでも盛んに行われるようになって、それは当時、宮中で行うよう正式な形ではない仁王会が頻繁に行われたかららしい。ちなみに、日蓮は『立正安国論』で百座百講の仁王会を批判しているよ。」
武田「そうなると、能の出来た室町時代は仁王会は一般的な法要だったんですか?」
原「そうみたいだね。大きな法要=仁王会というくらい。」
武田「そうなると、仁王会は鎮護国家の為の法要なのに、なぜ民間で普及したんですか?」
原「うん、実態は分からないんだけども……。国が乱れているのに、民衆が幸せに暮らすことなんてできなからじゃないかな。仁王会は七難即滅七福即招の法要だから、風害を防いだり、疫病を撃退する功徳から普及したのかもね。」
武田「もしかしたら、『葵上』の冒頭のプロローグで病の葵上へ「大法秘法医療など手を尽くしたしたけども、効果がなかった。」と述べられている、大法秘法にこの仁王会は入っていたのでしょうか?」
原「その可能性はあるかもね。真言宗では秘法と大法は種類が決まっていて、仁王会は秘法であり、大法だからね。」

武田「大体当日は何名くらいで、どんな内容になりますか?」
原「当日は10名くらいです。内容はまず独唱があって、そのあと花を散らしながら斉唱して、全員で仁王経を読みます。
仁王経は八品あるうちの、護国品を読む予定です。仁王経でよく言われることは正式名称を「仁王護国般若波羅密多経」って言うんだけど、経題に護国って言葉が入っているのはこれだけって言われてる。お釈迦様が、舎衛国の波斯匿王に説いたとされている。
伝説では弘法大師が825年にこの法要を神護寺で講したとされていて、これが真言宗にとって重要なの。」
武田「729年から宮中で恒例だったんですよね?なぜ重要なんですか?」
原「それはね、それまでは旧訳でやっていて、お大師様が初めて新訳で行ったの。」
武田「なるほど。」
原「それまでの仁王会は講説をするのみだったの。お大師様の言葉を借りると、講説はあくまで薬の効能を読み上げるようなもので、真言宗のやり方で修行して初めて、薬を飲むようなものになるんだと。」
武田「なるほど。」
原「お大師様はよくこの例えを使われて、密教化していくことが大事と唱えられたの。」
武田「すごいですね!」
武田「仁王会の法要は総本山への修行中には、習うんですか?」
原「いやいや、名前くらいしか習わないよ。仁王会を継承したり実修する人も少なくなってしまってるし。」
武田「じゃあ、稀曲ですか?」
原「うん、凄い稀曲だよ(笑)」

武田「今回の法要の、五大力明王はどのような仏様ですか?」
原「五大力明王は中央不動明王、東方降三世明王、南方軍荼利明王、西方大威徳明王、北方金剛夜叉明王の五人の仏様です。簡単に言うと、五人で五方を守って国を守るという考え方。ただ、今回の春燈会の仁王会法要でお祀りする仁王会曼荼羅を見るとわかるんだけど、不動明王の左手が羂索ではなく輪宝を持っていたりと、普通の五大明王と違うお姿になっています。非常にマニアック(笑)(当日、舞台上に掛け軸を飾るのでぜひご参照下さい。)」
武田「なるほど。ありがとうございます。」

原&武田「みなさん、お待ちしております!!」